評価

前書のリングワールドは読者を熱狂させました。筆者は続編を出す気はなかったのですが、読者の熱意が筆者を動かし本書を書き上げました。前作に劣らず面白い!
相変わらずのスケールの大きさ
一度はリングワールドを脱出した主人公のルイス・ウーですが、23年後、今度はパペッティア人の至後者(ハインドモースト)に誘拐されて再びリングワールドに連れて来られます。リングワールのスケールの大きさは相変わらずです。
本書では巻頭に大海洋付近の地図が載ってます。大海洋の中に地球が含まれているのですが、それを基準にするとリングワールドの巨大さがバッチリわかります。でかい!前書の「リングワールド」にはこのような地図はついていませんでした。
ひたすら大きいというのは伝わってくるのですが、地図で見るとより実感できます。この地図を見てから前書を読むとより楽しく読めると思います。
今回新しく出てきたでっかいものに隕石防御装置があります。これがすさまじい威力を発揮します。一発打つと、直径10キロの範囲が燃え上がるレベル。どんな隕石でも叩き落とせます。
それよりはるか後方で、浜辺は草原になり、さらに森林へとつづく。そのすべてが燃え上がっていた。広さ数千平方マイルの大かがり火だ。炎が四方から押しよせ、中央で垂直な火柱となって噴き上がるさまは、ずっとはるか彼方でひまわり花の集落に蒸気が流れ込んでいる光景とよく似ていた。
プロテクター登場
リングワールドは回転がずれて崩壊の危機にひんしています。ルイス・ウーたちがリングワールドを救うべく調査していくうちに浮かび上がってきたのが、パク人のプロテクターの存在です。
パク人は元来、銀河の<核>の中の惑星に住む種族だった。その一生は、次の三期に分けられるー幼年段階、繁殖者段階、プロテクター段階。成人すなわち繁殖者たちには、棍棒をふりまわしたり石を投げたりする程度の知能しかなかった。
リングワールドを作ってしまうくらいの種族ですからとんでもなく優秀な連中です。プロテクターは本書の後半で登場してきますが頭が良い上に強い!クジン人と白兵戦しても互角に戦えます。
憧れたくなる存在ですが、ちょっと頭が固いです。もうちょっと柔軟に考えられるようになれば無敵なんですけどねー。
幸運に振り回されるティーラ
前作でルイス・ウーと一緒にリングワールドに来たティーラはとんでもない幸運の持ち主でした。そのティーラが本作にも登場します。それもとても意外な形で。
彼女はパペッティア人が地球の出産政策に干渉して創りだした幸運の血統の末裔です。リングワールドに来るまで一度もつまずいたことがなく、怪我や病気もしたことがありませんでした。ただその幸運は自分のために働くものではないようです。
「つまるところリングワールドは、そのまだ生まれていない幸運な血統の子孫たちのためのものってことになるわ。わたしがリングワールドを救うことができれば、わたしが二十三年前にここへ来たことも、また<探す人>とわたしがオリンポス山の入口を発見したことも、結局はその人々の幸運のためだったといえるでしょう。彼らの幸運よ。私のじゃなく。」
プロテクターは自身が持つ高い知性と強力な本能に行動を支配されています。取るべき道が見えているのでそのとおりにしか行動しません。というか行動できません。ティーラも幸運に操られて生きていたようです。
自分のためではなく幸運を持ち子孫のために。プロテクターの知性、ティーラの幸運。プロテクターもティーラも幸せそうには描かれていないからでしょうか、知性も幸運もすごく羨ましいのですが、何かに縛られるというのは気に入りません。飛び抜けたものはいりません。制約のないそこそこの知性と幸運が欲しいです。
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