評価 review_5

「タイムマシン」刊行100周年に合わせて刊行された名作H・G・ウェルズのタイムマシンの正統的続編です。

この作品の作者は別人ですが、ウェルズの文体を徹底的に真似ており、「タイムマシン」と比べても違和感はまったくありません。ウェルズ自身が書いたといっても信じてしまいます。

1891年、時間航行家はタイム・マシンに乗り、ふたたび未来へ旅立った。タイム・マシンを発明した時間航行家は、最初の時間旅行から帰還したものの、野蛮なモーロック族に拉致されたエロイ族の少女ウィーナを忘れられなかったのだ。彼女を救うべく時間航行家は西暦80万2701年の未来をめざすが・・・H・G・ウェルズの名作『タイム・マシン』の続編として遺族の公認をうけ、英国SF協会賞はじめ英米独の四賞を受賞した傑作

(上巻裏表紙の紹介文より)

この作品を読めば、その時間と規模の大きさに圧倒されるでしょう。作中の出来事を高いところから見下ろすような全能感を感じてしまいした。

時間に関しては、主人公がタイムマシンに乗って移動する際の描写に感じ入りました。まるで目の前で実際に起きているように感じます。

木々は地面から湧き出ては、あっという間に砕け散って切り株だけになっていく。――その何世紀にもわたる生命が、われわれの心臓の一拍ほどの時間に短縮されているのだ。テムズ川は銀色の光の帯であり、その表面は時の流れのなかで鏡のように均されている。みずから川岸をけずって流れを変え、巨大なのろのろとした地虫のように、風景のなかをのたくっていた。 

モーロック族は、太陽に球殻を覆いかぶせることにより太陽エネルギーのすべてを利用できるようになりました。

「球殻は大きいのだ。惑星上の距離感に慣れているきみには、その大きさがなかなかわからないだろう。球殻は、きみたちが金星と呼んでいた原始惑星の軌道を内側につつみこんでいる。その表面積は地球の三億倍に近い・・・」

とてつもない規模の大きさです。クラクラとめまいがしてきそうです。
未来から戻ってきた主人公は、再度、未来へ向かうためタイムマシンに乗り込みます。途中で違う未来の方向へ進んでいることに気づきましたが、後戻りできずに、時間の波に翻弄されてしまします。

今作では、過去と未来を何度も行き来します。物語の終りで、時間旅行により生じるパラドックスを解決し、ひとつの円環は閉じます。

しかし、主人公は、さらに高いステージが存在することを、時間旅行の同伴者であるネボジプフェルから教えられます。そして、ネボジプフェルは、そこに向けて旅立ちます。彼の未知なるものに挑む姿勢に、私は奮い立ちました。

「それに成功したら?やめるかな」
「やめることはない。はてはないんだ。先へという意志に終りはない。生命と精神にとって挑戦できない限界点はないし、破れない限界点はない」

とても前向きな気持ちで読み終える事のできる最高の一冊です。

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