評価 review_4

ガリバー旅行記を知らない人っているのでしょうか。そう思ってしまうくらい有名な作品です。ガリバー旅行記が発行されたのは1726年です。最近では、毎年7万冊以上の本が新たに発行されています。

そんな中で300年前に発行された本が、いまだに書店に並んでいるってスゴイことです。時代を超越した状況設定だからでしょうか、300年前に書かれたこの本から古臭さを感じません。

子供の頃に子供向けガリバー旅行記を読んだ人が、完全版ガリバー旅行記を読めば、少なくとも2つの点でギャップを感じることでしょう。

ひとつは、完全版のガリバー旅行記の構成についてです。子供向けガリバー旅行記が小人国、大人国で終わっているの対して、完全版では、小人国、巨人国に追加して、空中国、馬の国の4編で構成されています。

一番驚いたのが第3編です。まさかこの本にラピュタが出てくるとは!宮崎アニメの「天空の城ラピュタ」に登場するラピュタと同じく、空に浮かぶ城が登場します。ガリバー旅行記が元ネタだったんですね。その他にも不死人、ヤフーなどが登場します。

作品のアイデアというのは、周りから何かしら刺激を受けて新しい形を生み出すものだと思うんです。300年前に作者スウィフトが住んでいたアイルランドはどんな状況だったんでしょうか。

こんなにたくさんのアイデアを盛り込んだ本を書きあげるとは、作者のスウィフトはただ者ではありません。

もうひとつは、風刺小説の形をとっている点です。子供版のようなほのぼのしたところは全くありません。風刺の内容も第1編、第2編と進んでいくうちに、どんどんドキツくなってきます。

周知のように、本書の最初の二篇、小人国・大人国の部分は往々の子供の読物と考えられている。言いかえればこの部分のスウィフトの諷刺には、まだ多少は人間性の可能を信じる暖かいものが見える。

彼の風刺がその本来の面目を発揮して、世界の文学にその比を見ないほとんどわれわれの面に腐った臓腑を投げつけられる思いのするのは第三篇、殊に第四篇である。

これらはある意味で文学が生んだ最も不愉快な文字であるともいえよう。だが、皮肉なことに、この不愉快な文字は却って最も娯しい文学よりもはるかに面白く、またはるかに真実の文学であるのだ。

(解説より)

第4編では、人間自体を否定してしまいます。この頃の作者スウィフトは、幸せな境遇になかったようで、身体に湧き上がる怒りを、そのまま本にぶつけたようです。

ただ、皮肉にまみれて読むのに耐えないということはありません。最後に解説を読んで風刺小説だと気づいたくらいです。個人的にはユートピアとして描かれる「馬の国」に、憧れを抱きながら楽しく読み進めました。

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