評価 review_3

「ディック傑作集」と銘打った短篇集の第2編です。ディックの作品は独創的なアイデアにあふれています。

ここにある短編の大半は、私の人生がいまより単純で、ちゃんと意味をなしていた時代のに書かれた。あのころのわたしは、現実の世界と自分の小説の世界の区別ができた。

よく庭の草取りをしたが、メヒシバにもなんら幻想的なところや超次元的なところはなかった・・・ただ、そこがSF作家の因果なところで、やがてメヒシバにも疑惑の目を向けるようになる。メヒシバの本当の動機とはなんだろう?だれが最初にそれを送り付けてきたのだろう?

(著者による追想より)

独創的なアイデアを得るためには、なにかしら代償を払わないといけないようです。ディックの場合は、庭の芝(メヒシバ)の真の正体に考えるようになってしまいました。庭の芝について真剣に妄想するディックを想像して、「おいおい、大丈夫?」とニヤッとしました。

しかし、一生懸命、ネタを探そうとするあまり、妄想癖が身についたのでしょう。アイデアは簡単に浮かばないことをうかがわせる一文ですね。

【目次】

  • 父さんに似たもの
  • アフター・サービス
  • 自動工場
  • 人間らしさ
  • ペニー・セモリがいなかったら
  • おお! ブローベルとなりて
  • 父祖の信仰
  • 電気蟻
  • 時間飛行士へのささやかな贈物

「父祖の信仰」

【あらすじ】
共産主義が資本主義を駆逐した世界。 出世を望む共産党職員の董は、ある日、薬売りからかぎタバコを売りつけられた。

自宅でそのかぎタバコをやると、テレビに映る共産党指導者「人民の絶対の恩人」が生命のない機械装置に見えるようになってしまった。後で「恩人」の正体を探るグループからそれは、かぎタバコではなく、抗幻覚剤だと知らされる。そうであれば、人間に見えない「人民の絶対の恩人」は何なのか。

なかなか惹きつけられる作品です。主人公の董が、「恩人」の正体を探ろうと「恩人」に接触しようとしますが、そのあたりのくだり(p267~)が、私にとってはかなり難解でした。そこまでは、楽しく読めたのですが、ここで一気にハードルが上がりました。

何か大きな力を持つものが存在するということを表現したかったのかな?と思うのですが。
この部分がどんなふうに読み取れるか、一度、あなたも挑戦してみてはいかがですか?

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