評価 review_3

ディックのデビュー作「ウーブ身重く横たわる」や映画「ペイチェック 消された記憶」の原作である「報酬」など10編の作品をまとめた短篇集です。この短篇集にハッピーエンドはあまりありません。ギョッとする終り方や悲しい結末の方が多いです。

私は楽しみのために読書をするので、気持ちが沈む結果になる作品は読みたくありません。しかし、この短篇集は、何度か読み返しています。何やらあやしい魅力を放っている短篇集です。

【目次】

  • ウーブ身重く横たわる
  • ルーグ
  • 変種第二号
  • 報酬
  • にせもの
  • 植民地
  • 消耗員
  • パーキー・パットの日々
  • たそがれの朝食
  • フォスター、おまえ、死んでいるところだぞ

「変種第二号」

【あらすじ】
国連軍とソ連軍の全面戦争が勃発した地球が舞台。ソ連軍の先制攻撃を受けて敗戦の淵に立たされた国連軍は、自己進化をし、自律的に敵を攻撃する新兵器”クロ―”を開発し、戦線に投入した。自己進化を重ね、

凄まじい威力を発揮するようになったクローにより戦況は一変し、国連軍は戦争に勝利しつつあった。国連軍のヘンドリックス少佐は、ソ連軍と会談するため、敵の前線司令部に赴くことになった。その途中で、一人の少年と出会う。

国連軍が開発したクローはとんでもない兵器です。クローにかかれば、兵士、民間人の区別なく、皆殺しにされてしまいます。

クローは他の兵器とはちがう。彼らは生きているのである。政府が認めようが認めまいが、実際的な面ではどこから見ても生きている。彼らは機械ではない。

彼らは生き物だった。ぐるぐるまわり、這い、灰の中から突然体をゆさぶりながら現われては人間めがけて突進し、その体によじ登っては、喉笛に襲いかかる。そのように彼らは設計されているのである。それが彼らの仕事だった。

作中のクローは、ここから更に進化していきます。まったく、恐ろしい兵器です。フランケンシュタイン・コンプレックスを見事に顕在化させた作品です。ドキドキ、固唾を呑みながら読み進めてしまいました。

 

「報酬」

【あらすじ】
技術者のジェニングズは、2年間、レスリック建設で働いた。多額の報酬を引き換えに契約期間中の記憶を消すという条件で。しかし、契約終了時に彼が受け取ったのは、現金ではなく、過去の自分が選んだひとつかみのガラクタだった。何が俺の気を変えさせたのか?混乱が収まらないうちに、ジェニングズは騒動に巻き込まれていく。

記憶と報酬を交換する。よくこんなアイデアを思いつくものです。まず、このアイデアで話に引き込まれ、その後の展開をグイグイ追いかけてしまいました。それぞれのガラクタの使い道もよく考えています。読後感もいいですし、オススメの作品です。

「全額、一度に?」
「五万クレジット」
ジェニングズは微笑した。相手がその金額を口にするのを聞いて、すこし気分がよくなった。結局、そう悪くもなかったじゃないか。眠っているあいだに稼いだようなもんだ。しかし、あれからふたつ年を食った。それだけ寿命が減った。まるで、自分の一部を、自分の人生の一部を切り売りしたようだ。

1ヶ月や半年なら・・・という感じもしますが、2年間分の記憶を消去するなんて約束は、怖くてとても出来ません。2年間の記憶に見合う金額ってどのくらいでしょうか?1千万円?1億円? 金額以前にその後、いつまでも自分はその間に何をしていたのかが気にしているでしょう。

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