あらすじ

ある日、研究者のジェフリー・ホートンが調整を終えた開発中の実験装置を起動させると実験室周囲で複数の銃の暴発や爆発事故が同時多発的に発生した。原因を追求した結果、ホートンが開発した装置には一定範囲内の火薬を爆発させる効果があることが判明した。

トリガーと名付けられたこの装置が広まれば火薬をベースとした兵器は役に立たなくなり、安全保障の概念が根底からひっくり返してしまう。

トリガーをどう扱えば良いのか。せっかく築き上げた軍事力の優位性を維持するために秘匿するか、公開して銃のない新しい世界秩序を目指すのか。トリガーを巡って市民、軍部、政府など様々な立場の人間の思惑が入り乱れる。

評価 review_5

アメリカならではの題材

西部劇やギャング映画などの影響なのかアメリカには銃がたくさんある印象があります。これは印象ではなく実際にたくさんあります。いくつか銃に関するデータを紹介します。

  • アメリカ国内にある銃の数は約2億7千万丁で世界最多
  • 銃を所有する個人の割合は88%
  • 発砲事件による年間の死者数は3万人以上

数字で見る米国の銃事情より

銃がたくさんあるおかげで強盗などの事件で武器としてよく使われていますが、それ以上にインパクトがあるのが「銃乱射事件」です。一気に数十人が犠牲になるレベルの事件が毎月のように起きています。

例えばこんな事件。日本の通り魔だとせいぜい刃物なので犠牲者は数人程度です。しかし、銃だと10人、100人レベルの犠牲者が生まれます。本当に銃って能率的ですね。

バージニア工科大学銃乱射事とは、アメリカ合衆国バージニア州ブラックスバーグのバージニア工科大学で2007年4月16日に発生した銃乱射事件。33名が死亡し、アメリカの学校での銃乱射事件において、1966年のテキサスタワー乱射事件(死者15名(容疑者1名を含む)、ほかに妊娠中女性の胎児1名)、1999年のコロンバイン高校銃乱射事件(15名(教師1名、容疑者2名含む)死亡)を上回る史上最悪の犠牲者数となった。

アメリカ大統領もすごく怒っています。乱射事件のたびに声明を出しているような・・・。

オバマ大統領は1日、オレゴン州での銃撃事件を受け、ホワイトハウスで記者会見し、「米国は先進国で数カ月おきに、こうした銃乱射事件が起きる世界で唯一の国だ。我々は銃乱射事件にマヒしている」と述べ、銃規制の強化を改めて訴えた。静かな町をおそった銃撃事件に、地元住民は衝撃を受けている。

オバマ氏は時折語気を強めながら、米国で銃乱射事件が後を絶たない現状について「(事件について)考えたり、祈ったりするだけでは不十分だ。多くの犠牲を繰り返しているにもかかわらず、米国には十分な銃規制の法律すらない」と強調した。銃購入の際の犯歴照会を強化する銃規制法案が、米議会で多数を握る野党共和党の反対で棚上げされていることへの憤りをあらわにした。

こういう事件が起きるたびに小説で登場するトリガーのようなテクノロジーを夢想する人も少なくないのではないでしょうか。トリガーがあれば状況が一変しますからね。

銃規制は簡単ではない

銃による事件が申告的ならトリガーを全国的に展開してビシビシ銃規制すればいいじゃないと薄っぺらく考えながら読んでいたのですがアメリカ国内の事情を知るとやっぱり大変ですね。

小説内でのアメリカの銃規制をめぐる考え方は現実に沿った設定です。銃規制に反対の人はトリガーにも反対です。

強力な銃規制反対者として全米ライフル協会があります。スローガンは、「Guns don’t kill people, people kill people.(銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ)」。

小説の中でも反対派の代表格としてひんぱんに登場し、トリガー反対活動を繰り広げます。

一般市民にも銃規制反対(トリガー反対)は大勢います。

その通りだ。あんたはおれから家族を守る能力を奪い、妻が夜勤やひとりで車まで歩かなくてはならないとき自衛する権利を奪った。俺の息子からは、ホモセクシュアルの誘拐犯やヤク中のごろつきから身を守る可能性を奪った。我々は自宅にいてさえ無防備にされてしまったんだから、これを攻撃と言わずなんという。これは家族に対する攻撃であり、憲法に対する攻撃なんだから、まさにおれ自身に対する攻撃じゃないか」

彼らは銃を自分や家族を守る重要なツールと考えているんですね。こういう人が銃規制を受け入れるはずがありません。

さらに極端な人たちがいます。それが300万人以上もいると言われているプレッパーズです。

プレッパーズとは、世界の終わりに備えて、水や食糧を貯め込んだり農園を作って自給自足を目指したり、地下にシェルターを作ったり武器を集めたり戦闘技術や応急手当などのサバイバル技術を磨いて自衛を志す人たちのことだ。サバイバリスト(生存主義者)とも呼ばれている。

プレッパーズは生き残るには銃は必須と考えていますから絶対に銃を手放そうとしません。

小説をきっかけにネットで銃規制について少し調べてみたんですが、銃を手放すのは無理では無いかと感じました。銃乱射事件が起きると防衛意識が高まって銃の購入者が増えるようですし。

○トリガーは戦争を変えない
小説では市民と銃の関係の他に、軍と銃の関係にも踏み込みます。火薬と軍は切っても切れない関係です。

トリガーには一定範囲内の火薬を爆発させる機能を持っています。戦争には火薬が不可欠ですからトリガーが登場すれば戦争のやり方は大きく変わるのではと考えました。火薬が不要の刀と弓が復活するのかとか。従来のドンパチは無理でしょう。

ところが軍部はトリガーが世界中に普及しても戦争のやり方は大きく変わらないとアメリカ大統領に説明します。

全体としての結論を申し上げれば、大統領閣下、ただ一つの例外はあるもののすべての対立モデルで、我が軍はいまから六ヶ月以内に、トリガーが出現する以前にわが軍が享受していた状態に匹敵する戦場支配力のレベルを再現できると思います。六ヶ月以内に、我々の軍事力はトリガーを基礎とする防御を圧倒し、通常兵力を用いて軍事目標それぞれにふさわしい、いかなる程度の破壊的致命性をも与えることができるようになるでしょう。

軍部はトリガーを骨抜きにする方法を編み出しました。一体どういうやり方でしょうか。まったくよく考えられている小説です。

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