評価 review_4

時間を超えた戦い、ロボットとの争い、惑星間戦争などいろいろな形の「戦争」をテーマにした短篇集です。どの作品も内容が濃く、グイグイ読んでしまいました。なぜ戦争というのはこうも魅力的なのか・・・?

【目次】

  • 地球防衛軍
  • 傍観者
  • 歴戦の勇士
  • 奉仕するもの
  • ジョンの世界
  • 変数人間

「地球防衛軍」

【あらすじ】
地球規模の核戦争が勃発する前に、全人類は地下シェルターに避難した。人間の戦争を代行するロボットを地上に残して。それから8年が過ぎた今、核爆弾により浮遊放射能塵の雲が太陽をさえぎり、国土全体は破壊され尽くした。主人公たちは、一度、地上の状況を確認しようとするが・・・。

ロボットの行動原理として有名なのが、SF作家アイザック・アシモフが提唱したロボット三原則です。この原則は、現代のロボット工学にも影響を与えました。

【ロボット三原則】

  • 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
  • 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
  • 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

ロボットを創りだすのであれば、ロボットへのこの原則の適用は必須条件です。さもなくば、ロボットに寝首をかかれる恐れもありますから。

ロボット三原則が世に示されたのが1950年で、この作品が刊行されたのが1955年。ディックはロボット三原則を知っていたのでしょうか。知ってか知らずか、ロボットたちはこの原則に沿った行動をしたと見ることも出来るのではないでしょうか。

「そうです。」A級ロボットが認めた。「あなたがたが地下へもぐったとたんに、戦争は終わりました。あなたのいうとおり、あれは虚報でした。あなたがたは地下でせっせと働いて、いろいろの武器を地上に送りました。われわれはそれを受けとるはしから破壊しました。」

ロボットたちは、「戦争を継続せよ」という人間の命令に従わないので、第二条に違反したということになります。しかし、人間に危害を及ぼさないため(第一条)だったと解釈出来ます。人間のために行動する場合は、必然的にこの原則が当てはまるんですね。
この場合は、結果オーライですが、全く愚かな人間たちです。この人類はロボットに足を向けて寝てはいけません。

「歴戦の勇士」

【あらすじ】
退役軍人の老人が語る戦争話は、過去のものではなく、一ヶ月後に勃発する地球対植民惑星のものだった。地球の軍部は敗北を避けるため、老人の話から戦局の転機を探ろうとするが・・・

地球の軍部は、老人の話から戦後の地球の姿を再現します。

地球は廃墟だった。それをながめる将校団から思わず嘆息がもれた。生き物は全滅だ。なにひとつ動くものはない。クレーターにおおわれた表面をさまようものは、放射能塵の死の雲だけ。

三十億の人びとが住んでいた生命の惑星は、黒焦げの燃えかすでしかなかった。たえず吠えたける風に悲しく吹き散らされた灰燼が、空白の海上を漂っている。

未来がわかってしまうというのは、どんな気分でしょうか。望んだ結果であればいいでしょうが、気に入らない結果の場合、生きる希望をなくしてしまいます。それとも未来を変えようとあがくのでしょうか。
時間ものと捉えて読み進めましたが、さらにひとひねりあります。それぞれの立場を越えて、手を取り合おうとしていく主人公たちは好ましく感じました。

「奉仕するもの」

【あらすじ】
百年以上前の戦争の後、人類はすべてのロボットを破壊した。そして、放射能に汚染された地上を避け、地下シェルターに移り住んだ。ある日、主人公は文書輸送の途中で、壊れかけのロボットは発見する。

この作品に登場するロボットは、ロボット三原則が適用されていません。人類に敵対する存在として描かれています。登場するロボットは、敵対することを知らない主人公を言葉巧みに操ろうとします。

「最初のロボットは一九七九年に作られた。二〇〇〇年には、すべての単純労働はロボットの手で行われていた。人間は好きなことを自由にやれるようになった。芸術、科学、娯楽、なんでも自分の好きなことを」

2000年はとっくに過ぎましたが、相変わらずあくせく働いています。ロボットを助けることで、こんな世界が来るなら何をおいても助けちゃいます。さて、ちょっとロボットを助けに・・・

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