評価

コメディ、スリラー、シリアスなど色んなタイプの作品をまとめた短篇集です。作者の書き方が上手いからでしょうか、
昭和52年発行のSF小説ですが、古臭さは全く感じません。「石」以外の作品は楽しく読みました。「石」は怖すぎます。私は受け付けませんでした。
【目次】
- さとるの化物
- 花のこころ
- 遺蹟
- さんぷる1号
- 恵みの糧
- 恥
- 忘れられた土地
- 正午にいっせいに
- 比丘尼の死
- おえらびください
- 宗国屋敷
- 消された女
- 彼方へ
- 石
- 五月の晴れた日に
「正午にいっせいに」
「時刻は動かない。永遠に午前十一時四十七分二十秒だ。――だけど月日だけが経過していく」男はつぶやいた。「正午は永遠にこない」
正午の革命蜂起をまちわびる男の物語です。しかし、何度、時計を確認しても12時になりません。一向に正午が訪れないことに気づき混乱する男ですが、挫けること無く、あくまで前向きです。何が男をそうさせるのでしょうか。私ならとりあえず昼飯を食べに行きます。
「宗国屋敷」
【あらすじ】老人趣味の若者、宗輔は、母親や婚約者に内緒で、侘び寂びのある別荘を作るが・・・
じっと眺めているうちに、あちこちの山を物色してみつけた岩をゆきやたまにはこばせ、作造に指図して、そのさびきった庭をこしらえるよろこびが、胸のうちにふくれ上がってくるようだった。――それは、身うちのふるえるような、蠱惑的な、秘密のよろこびだった。誰にもしられたくない、孤独な楽しみだった。
婚約者は、宗輔のことを女々しいと軽蔑していますが、人の趣味はそれぞれです。自分に合う人物を選ぶべきだと思います。婚約者は、宗輔を立ち直らすと息巻いていますが、さっさと婚約解消するのが正解だと思います。
婚約者に軽蔑される宗輔ですが、自分の趣味のために、立派な別荘まで作ってしまう行動力には感心します。宗輔の能力は十分にあります。あとは発想の転換をすればOKです。
たとえば、作中に登場するゆきとたま(宇宙船乗組員用の成人用アンドロイド)を量産して、日本のオタクたちに売りましょう。これは間違いなく大ヒットします。そうして、一財産築いてしまえば、あとは婚約者と縁を切って趣味に生きて行きましょう!